毎日新聞に掲載の記事、大学時代ラテンアメリカの歴史を学びましたが氷山の一角です。
最近のトヨタの件を見ると、自国の利益の為なら手段を選ばないアメリカ政府の体質は変わってないようです。
グアテマラ:「無知を利用」アメリカ人体実験の兵士が証言
人体実験のモルモットにされた」と訴える元兵士のフェデリコ・ラモスさん(右)。長男ベンハミン・ラモスさん(左)も感染の可能性がある=國枝すみれ撮影
1940年代後半に米政府公衆衛生局の医師らによって故意に梅毒や淋病(りんびょう)に感染させられた中米グアテマラの元兵士らが、毎日新聞の取材に「風邪の注射だと思った」「無知を利用され、モルモットにされた」と人体実験の実態を証言した。実験は第二次大戦で米兵に急増した性病のまん延を防ぐため、米国の強い影響下にあったグアテマラで、開発されたばかりの抗生物質ペニシリンの効能を試すのが目的だった。オバマ米大統領が10年秋に謝罪し、両国政府は「生存被害者」と認定された6人の賠償問題などの解決を目指し、外交交渉を開始する見通しだが、非認定被害者が米政府に賠償を請求する動きも出始めている。【エスカレラ(グアテマラ中部)で國枝すみれ】
グアテマラ中部アカサグアストランから北へ9キロ。人里離れたエスカレラ村で元グアテマラ軍兵士のフェデリコ・ラモスさん(86)は電気、水道、ガスのない土壁造りの家に暮らす。48年に徴兵され、49年に軍病院で注射を4回受けたという。
「何の説明もなかった。最初の注射を受けた後に排尿痛が始まり、軍医に性器から菌が検出されたと言われた」。排尿痛は淋病の主症状の一つだ。「米国の人体実験のモルモットにされた」と憤る。
性病の売春婦を受刑者や兵士と性交渉させる実験も行われた。マヌエル・グディエルさんは昨年6月、87歳で亡くなった。息子のマテオさん(57)は「父は47年に入隊し、上官に15日おきに売春宿に通うよう命令された。翌日に検査を受けたと聞いた」と明かす。
検査で血液を採取する「報酬」として、たばこやせっけんが与えられることもあった。だが、ペニシリンによる治療は一部にしか施されず、手当てされずに放置された者もいた。被害者約1160人のうち51年までに少なくとも69人が死亡した。
グアテマラのエスパダ前副大統領によると、両国政府は生存被害者6人の賠償問題などについて外交交渉を始めるという。だが、グアテマラ人権委員会には15家族から被害の訴えが寄せられ、米政府に賠償を求める集団には非認定被害者約50家族が参加している。フェデリコ・ラモスさんも非認定被害者だ。
スペイン語で「階段」を意味するエスカレラ村はトウモロコシと豆による自給自足の暮らしだ。小学校が建ったのは56年前。中学校と病院は今もない。読み書きができないラモスさんは「米国は私たちの無知を利用したのだ。賠償してほしい」と訴えている。
◇グアテマラ人体実験とは
中米グアテマラで1940年代後半に米政府がグアテマラ政府の協力を得て実施していた性病の人体実験。資料を発見した米国の歴史学者が10年5月に学会で発表して明るみに出た。オバマ米大統領が10年10月、グアテマラのコロン大統領に謝罪。両国に調査委員会が設置され、実態解明が進められてきた。
先月7日に発表されたグアテマラ政府の報告書によると、米公衆衛生局や米国立衛生研究所は46年7月~48年12月に受刑者、兵士、売春婦、孤児など少なくとも約1160人に梅毒スピロヘータや淋菌を接種するなどした。グアテマラ政府は自国と米国に残された資料を照合し、6人を「生存被害者」と認定した。米国では32~72年に南部アラバマ州で貧困層の黒人約400人に対する性病の人体実験が実施されていた例がある。
毎日新聞 2012年1月21日 2時30分
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